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No.015MITSUKARU STORIES小売静岡県 静岡市 葵区2026.10.15

「土の恵みを余さず届けたい」実りの苦悩から拓いた手仕事。aowarau 榎本さんの信念

aowarau 榎本農園

澄んだ空気が流れ、四季折々の風が通り抜ける畑。土の匂いとともに木々が伸びやかに葉を広げるその場所に、aowarau 榎本農園の営みがある。

自然のリズムに寄り添いながら作物を育てる農園の現場には、豊かな実りがある一方で、店頭には並ぶことのない現実も横たわっている。天候の移ろいや自然の猛威と向き合いながら収穫を迎えても、すべての作物が均一な規格に収まるわけではない。その現実を前に、農園が紡ぎ出したのは、素材の命を丸ごと生かし切る誠実なものづくりだった。

規格外という現実と向き合い、芽生えた悔しさ

真摯に土を耕し、日々の手入れを重ねて育て上げた果実や野菜。しかし、収穫の時期を迎えると、ほんの少しの傷や大きさの不揃いを理由に「規格外」として弾かれてしまう作物がどうしても生まれる。味や栄養には何ら遜色がないにもかかわらず、市場の流通に乗らないというだけで畑に残され、廃棄を余儀なくされる光景があった。

丹精を込めた作物が無駄になっていくやるせなさは、農園を営む中で消えない葛藤として積み重なっていった。

「どれだけ愛情を注いで育てても、形が不揃いなだけで市場からは価値がないと見なされてしまう。命ある実りを手放さざるを得ない悔しさは、ずっと胸の奥に澱のように残っていました」

自然相手だからこそ生じる不揃いさを、ただの「無駄」として終わらせたくない。その悔しさと実りへの敬意が、加工品という新たな形で作物の命を食卓へ届ける決意へとつながった。

自然の力を引き出す、柿酢とジンジャーシロップ

廃棄の危機にあった素材に光を当て、日常を支える調味料やシロップへと生まれ変わらせる試みが始まった。添加物や過剰な調味に頼るのではなく、素材そのものが持つ力強い風味や栄養を最大限に引き出す手法が選ばれた。

柿そのものの力で醸す「純柿酢」

農園で実った柿を余すことなく使い、水やアルコールを一切加えずに仕込む純柿酢。柿自身が蓄えた糖分と自然の酵母の働きによって、時間をかけてじっくりと静置発酵させる。ツンとした刺激が少なく、角の取れたまろやかな酸味と柿特有の穏やかな甘みが特徴である。

大地の刺激と温もりを閉じ込めた「クラフトジンジャーシロップ」

自家栽培の生姜が持つ力強い辛みと香りを丁寧に引き出したジンジャーシロップ。生姜の風味を損なわないようスパイスや粗糖とともにじっくりと煮出し、飲む人の身体を芯から温めるような深い味わいに仕上げている。

農園が手がける加工品には、共通する確かな基準が存在する。

  • 素材本来の生命力を損なわない製法:余計な添加物は加えず、自然の滋味をそのまま引き出す
  • 時間と手間を惜しまない手仕事:発酵や熟成、火入れの工程を一つひとつ手作業で確かめる
  • 毎日の暮らしに無理なく馴染む味づくり:料理やドリンクとして日常的に続けられる口当たりの良さ

これらのプロダクトは、以下の丁寧な工程を経て生み出されている。

  1. 畑で収穫された素材の中から、加工に適した完熟のものを手作業で選別
  2. 素材の特性や気温に合わせ、熱の通し方や仕込みの配合を細やかに調整
  3. 自然の力に委ねながらじっくりと熟成させ、風味の角を取り深みを引き出す

一滴、一口の先に思い描く、健やかな食卓

作物を加工して瓶に詰める作業は、単なる保存食づくりではない。瓶の向こう側にある「食べる人の暮らし」を思い描くことから、すべての工程が始まっている。

日々の料理に柿酢をひと振りして味を調える時間や、仕事終わりにジンジャーシロップを炭酸水やお湯で割って一息つく瞬間。生活の何気ない場面で、口にした人の身体が整い、心が緩むような体験を届けることを目指している。

「私たちの仕事は、瓶に詰めて届けるところで終わりではありません。お客様の食卓で、身体がふっと軽くなったり、家族の間で美味しいねと笑顔が生まれたりする瞬間に寄り添いたいのです」

購入者から届く「身体が温まり調子が良くなった」「酸味がまろやかで子どもが好んで野菜を食べるようになった」という声は、畑で土と向き合い続ける日々の大きな支えとなっている。

畑から広がる笑顔を、これからの未来へ

ブランド名である「aowarau(あおわらう)」という言葉には、青々と生い茂る草木のように、命が健やかに息づき、自然とともに笑い合える場所でありたいという想いが込められている。

市場の規格という枠組みに縛られず、自然の恵みを余すところなく生かし切ること。そして、土と食卓を誠実な手仕事でつなぎ続けること。畑の片隅で感じた悔しさを原点に始まった挑戦は、これからも日々の食卓に静かな温もりを届けながら、未来へと歩みを進めていく。

農園の歩みや商品の詳細については、公式ウェブサイトや公式Instagramにて発信されている。

取材・文=みつかるグラム編集部

この記事の店aowarau 榎本農園〒421-2109 静岡県静岡市葵区福田ヶ谷8-1
08:00–17:00
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